19.Alone again naturally….
オレと彼女はブリスベンからシドニーへ向かう途中ゴールドコーストで2泊した。
安らかな休日だった。
それからまたバスに乗りシドニーへと降り立った。
途中、バスの休憩所で髪・ヒゲを伸ばし放題でボロボロのショートパンツの
オヤジとオレを彼女が間違えたのを覚えている。
オイオイ、オレはあんなスリリング・ゾーンかい!!
シドニーのセントラルステーションに降り立った時”やっぱ都会だなあ”と感じた。
とにかくビルが多く人も多い。
オラ、ドキドキすでだー
オレ達はハイドパークという町の中心の大きな公園の近くのホテルに泊まった。
普通の観光客のように名所を色々まわった。
とにかくブリスベンに比べると町が大きく、
ちゃんと回ろうと思ったら何日かかるかわからなかった。
(まあこの後オレは暮らすことになるんだけど…)
・・・・・・・
どういうわけかこの時彼女とオレは、もめることが多かった。
と言うよりもオレがなぜだか分からないイラ立ちに不機嫌気味になっていた。
はるばる遠い日本から来てくれたというのに…何をやっていたんだろう。
何にイラ立ってるんだ?!…何か変だオレ……。
正体不明の不安が胃を締め付け、波紋のように広がりそして消えていった。
その数日後、彼女が日本に帰る日になった。
シドニー空港まで二人とも言葉が少ない。
半年前の成田空港が頭によぎる・・・
空港のコインロッカーにオレの荷物を預ける。そしてカギを掛けた瞬間…
彼女は糸の切れたあやつり人形のようにその場にヘタンと座り込んでしまった。
オレも隣に座り込む。……彼女の目は濡れていた。
一気に胸を押しつける重み。
「……大丈夫か?」………
こんな時に情けない程気の利かないセリフしか出てこない。
彼女「……….」
無言でオレの左手を彼女の右手が握ってくる。
体中の血液が急激に顔面に集中するような気がした。
ものすごく胸が苦しくなった。
気が付くと涙をこらえる作業で必死だった。
二人とも無言で手を握ったまま、しばらくそこから動けなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・
ずっと泣き顔だった彼女は帰る時になって笑顔で
「また来ちゃうかも・・・。」と言い残しゲートへ消えて行った。
送迎デッキからJALのその飛行機をずっと見ていた。
目の前にあったそれは空に向かってどんどん小さくなっていった。
飛行機が消えて見えなくなってもしばらくその場所から動けなかった。
見送るってこういう気持ちなんだ……
なんか自分に無性に腹が立っていた。
沈んだ気持ちで空港出口に重い足を向かわせる。
半年前日本を出国した時よりも、ずっと一人ぼっちになった気分だった。
それから、バスでバックパッカー(安宿)を目指し、空港を後にした。
窓際の席に座り、空ばかり見ていた。