4.毎日がエキサイティング!語学学校の日常
次の日からはバスで学校まで行った。
初の一人登校で少し緊張した。
でも途中から初めて通る道を食い入るように眺めた。
のどかな光景だっった。
どっかしらに公園がある。しかも結構大きな。
子供は幸せだろうな…と、ほのぼのしてるうちに町に着いた。
降りるバス停が来たのでブザーを探した。
しかし……
ない!!
どこにもそれらしき物が見当たらない。焦った。
ヤバイ、何処まで連れて行かれるんだ。
大規模誘拐だ…助けてくれえー
などと考えている内にバスはそのバス亭で止まった。
どうやら誰かが押したらしい。でも何処のブザーで?
考える間もなくバス停に降ろされた。
何だったんだ?
またもやびっくりの国へ、いらっしゃいだ。
その後、窓の下にあるレールに触るとセンサーになっていて停まる。
という事が分かるまで、ヒヤヒヤしながらバスを使った。
分かったその日は安心してビールを余計に飲んだ。
(理由なんてなんでも良かった。)
学校に着くと昨日のテストを元にクラスが決まっていた。
3Cと書かれたそのクラスは受付の階から一階上だった。
クラスに入る。
ほとんど皆、揃ってるみたいだった。
まずリコのチョビ髭が見えた。
「なんだ一緒じゃん。」という感じでニッコリ。
ミツもいた。後は6・7人位の日本人女性。
あのスタイルのいいスイス人女性の一人も居た。
他にもスイス人の女性一人。あとは韓国人、台湾人といったメンバーだった。
なんだか不思議な空間だった。
異国で更に別の国から来た知らない人同士。皆、妙に静かだった。
先生らしき女性がしばらくして入ってきた。
背が高く研ナオコみたいな顔だった。
「Good morning!!」
皆チョットためらいながら「Good Morning」と返す。
ブローニーと名乗ったその先生はエライ鼻声だった。
風邪でもひいてるのかなとその時は思った。
卒業までその声だった・・・。
このクラスの生徒が一番最初に覚えた英語はrunny nose(鼻水)だった。
皆でよくふざけて「オ・ケーイ(OK)」というネットリとした口調を真 似した。
授業は特別難しくもなく簡単という訳でもなかった。
英語にはチョット自信があったけど、
ヒアリングとスピーキングはやはり初め戸惑った。
あのスタイルのいい外人さんはニコルと言った。
(23歳と分かった時はビックリしたけど…最初は絶対さばよんでると思ってた。)
話して行くうちに最初の冷たいイメージが解かれ、たまにこっちがギャグを言うと自分からもオチャメをさらけ出すようになっていった。
オレ外人さん相手に英語で笑い取ってる…
めっちゃ気持ちいいー・・・
もう一人のスイス人の女の子は19歳のアヌークと言った。
とても内気な娘でいつも顔を真っ赤にして喋っていた。
…のだけど…
ある時、クラスの日本人の女のコ達が何度か「焼肉食べたい!!」と日本語で言っていたら覚えてしまったらしくアヌークが
「ヤキニクタベタイ」と正確な日本語を 喋った。
皆大笑いしてしまった。シャイな彼女が変な日本人達に心を開いた瞬間だった。
それから悪い日本人が応用編で日本人の男の前で
”オトコタベタイ”って言うとおもろいよと付け加え た。(悪っ)
誰だそんな事する黒いヤツは?!
彼女はトップレベルギャグの”カトちゃんペッ”も振り付でマスターした。
最初は間違って”カトちゃんパッ”とか言って違う笑いも提供してくれてた。
左端アヌーク、中央ニコル、右端ダイアン
何日かしてもう一人のスタイルの良いスイス人ダイアンもこのクラスに移ってきた。
前のクラスは、馴染めなかったようで同じスイスフレンチがいるこのクラスを希望したそうだ。
そうそう、このスイスというのが不思議な国で同じ国にありながら地域によってドイツ語、フランス語、イタリア語が使い分けられている。
ダイアン、ニコル、アヌークの女のコトリオははフランス語圏でリコはドイツ語圏。
つまり会話は同じスイス人だけど英語のみで成り立つという事。
本当変わった国があるもんだ。
で、このダイアンと言えばやっぱり第一印象より全然若く20歳と言った。
全く信じられなかったけど、話して行くうちにやっぱりハタチだと分かっていった。
大人びたイメージとは裏腹に声のトーンがやたら高い。
なんか驚くと”ウ・ララー”と訳の分からない事を言う。変なヤツだった。
でもオレは変なヤツは昔から優遇していた。
ある日、彼女は鼻風邪をひいたのか、授業中にいきなり皆の前でブヒブヒ鼻 をかみだした事があった。
日本人の多いこのクラスはあ然としてダイアンを凝視。
それに気付く様子もなくまたブヒブヒ。
仕方なく隣に居たオレは「ダイアン、余計な事かもしれないけど日本人にとっては人前でそれやったらちょっと恥ずかしい事なんだけど…」
と言うと周りの視線に気付いて顔を真っ赤にして「ごめん…」と言って廊下にかみにいった。
帰ってくると彼女は「私の国では、かまずに鼻をすする事のが恥ずかしいのよ」と言った。
あっ、そうなの?…そういえばその前の週に授業中おれ鼻ズコズコやってたなあと思い今度はこっちが赤面した。
うーん。正に文化の違い恐るべし。
こいつはちょっとおもしろいヤツが入ってきたなと思った。
で、どういう訳かコイツも妙になついてきて毎日オレの隣に座るようになり授業中消しゴムやペンでちょっかい出してきてキャッキャ、キャッキャ言ってた。
“おまえ小学生かよ”とか思ったけどまんざら悪い気もしなかった。
クラスのヤツらは変に気を使ってオレの隣には座らなかった。と後で聞いた。
(クラスではは個人の席が決まっているわけじゃなく毎日適当なとこに座る)
…と言うかこの当時、裸足で履いたスニーカーでサッカーをやってエライ靴が臭かったので誰もオレの席に近寄りたがらなかったというのもある。
ダイアンあの頃、鼻風邪ひいててわかんなかったろうしねえ。
あの臭さはハンパじゃなかった。
自分で脱いでおいてあまりの臭さにビックリして、
フタをするようにすぐ履き直しちゃったぐらいだから…
密室殺人一歩手前の破壊力だった。
”ダイスケー勘弁してくれー”…非難轟々だった。