8.パーティアニマルズ
ある初夏の晴れた日曜日。
ロウ家の父親ギャリーの仕事仲間のパーティがあるというので誘われた。
パーティ?おっ、とうとう来たな。
やっぱりね、外国来たらパーティ行かな、あかんねん。
そう、これ持ってな、袖に腕通してな、斧持ってな、
ドンドットト、ドンドットト……
…って、なんでこんなもん着なあかんねん!時間ないねん!アホかーっ!!
“そりゃ、リコも酔っ払って女口説いて酒臭い言われるわー…”(実話)
(古くてわかり難い!!……ダウンタウンのごっつええ感じより。)
というのは置いといて…
この日の為にスーツ持って来た甲斐があるというもんだ。
と思ってヘレン(母親)と話していたら大笑いされてしまった。
「バーベキューパーティなんだから普通の格好でいいのよ。」と言われた。
えっ。そうなの?…チェッ、せっかく着れると思ったのに…
まあ、まだ出番のないこのスーツも後々活躍する事になるんだけど…
嫌な場所で……
そのギャリーの上司の家はロウ家から車で20分位の所にあった。
ANNERLYからさらに南に丘陵地帯を抜けて行く。
その途中、ジャカランダと呼ばれる南国の桜のような木々がピンクではなく
薄紫色の花を散らしていた。
ハッとするほど綺麗でしばらく見入ってしまった 。
日本は冬真っ盛りだというのに…
改めて遠いところのいるんだなあと感じた。
その家はとにかく立派な家だった。
リコのステイ先でプールがある家というのはもう経験していたが
とにかくデカかった。中には総勢20人位いて各々が酒、食べ物を持ちこんで楽しんでいた。
僕は最初こそ大人に混ざって話を聞いていたが、いつものように
「どこに住んでたの?トキオ(東京)?」「オーストラリア好き?」「何ヶ月いるの?」
という社交事例のセリフが終わると、なんか内輪ネタが始まってしまったので
(なんで何処行っても皆、この国は好きか?って聞くんだろう?…愛国心?)
ビールを飲みながらブラブラ歩き始めた。
そうだ!プール入ろう。
もう気分はチビッコだった。
広かった。20×15mはありそうだった。
ゆっくりと浸かった。最高に気持ち良かった。
仰向けになりプカプカ浮きながら泳ぎ出す。
まだ本格的な夏は始まってなかったが陽射しがとても気持ち良かった。
気分はイルカだっ た。
・・・・・・・・・はっ?
ここでまた悲劇は起こった。
何を血迷ったかこの男、イルカになったつもりで水中で後方回転をした。
そこまではよかった。次の瞬間…
ゴツッ。
鈍い音 がした。
水面から鼻骨の辺りをしこたま打って真っ赤にすりむいた男が顔を出した。
彼はコンタクトをしていたので目を開けてなかったのだ。……
あほー。そしてあほー。
後でヘレンが慌ててバンソーコーを貼ってくれたとさ。
♪チャンチャン。
……と簡単には行かなかった。次の日が大変だった。
クラスに入ると皆が「その顔どーしたのー」を連呼。
全然知らない人にも道で聞かれる始末。
オレは遠い目をしながら…
「さすがに10人相手 じゃ、ジャ パニーズ・カラーテ(空手)でもてこずったね」と黄昏て みる。
「何言ってんの。またバカ言ってらあ」というのが大抵の反応だったんだけど予想外の反応を示した男がいた。
そう。ブラジルの熱い格闘男ラファエルだ!!
その頃、結構英語を喋れるようになっていた彼は目を輝かせながら
「えーどうやって、やったの?」と真剣に聞いてきた。
そんなキラキラした目でオレを見んなー。
そして「ちょっと蹴ってみて」ときたもんだ。
……僕も後には引けなくなった。
やけくそになってジャッキーキックを見せてやった。
すると…
「すげー!!」
大男は答えた。
おいおい本当かよ。わたくし、シロートですけど?!。
そして…
「……でもグレーシ柔術 が最強なんだよ!!」
とぶつぶつ言って消えて行った。
・・・・変な奴!!
わかるでしょうか?この男の凶悪さ…
じゃなくてデコと鼻のキズ。
こんな写真をIDに使っていいのか?…
って言うか警察に捕まったら思わず
「はい、僕が3人アヤメました」
と言わざるを得ない写真です。本当、怖い・・・。