36.十二人の使徒~アデレード、君たち本当に日本人なの?
Are you Japanese, mate?
俺たち10人のパーティーは十二人の使徒の岩場を去ると今度は近くにあった洞穴のある海岸へと降りていった。
ここはあの”紅の豚”の中で主人公マルコ(だったけ?)
が住処にしていた所のモデルになった場所らしい・・
実はその他にもコーヘイが先に訪れたタスマニアには”魔女の宅急便”に出てきたパン屋さんのモデルがあったり
この先訪れる先には”風の谷のナウシカ”や”天空の城ラピュタ”のモデルになった場所があるらしい。
宮崎ファンの人はたまらない国でしょう・・・か?もう日もだいぶ傾いていてここは”言われてみればそうかな?!”位の感じだったけどオレはその洞穴の海岸よりも夕日に変わっていく雲にヤラレてしまった。
なんだああの雲・・・・。
すっげー
そういや、最近雲なんて全然
見てなかったなと思いながら
しばらく”ワールド”に入っていった。
そして初日のツアーは終わり俺たちは山の中のBPに向かって走り出した。
宿は山中にあるらしく到着するととても冷え込んでいた。周りには2・3明かりがあるだけで真っ暗だった。
他の参加者達は部屋に荷物を置くなり、その唯一の明かりの正体だと思われるBarだかレストランに皆で夕食を取りに行った。
貧乏人のオレとコーヘイは暗黙の了解でバックパックの中から米やパンを取り出し晩飯の準備を始めた。
オレは今朝の米の残りで作ったおにぎり。コーヘイはパンにチーズ。
オレがおにぎりをかじりながら”塩っ気が足んねえなあー”と呟くと
「ほれっ!!」っとコーヘイが防虫剤の様な小さな紙のパックをオレに投げた。
「・・・・・・・何?!コレっ?」と袋を読むと”Salt”と書かれていた。
「おーサンクス。いいモン持ってんじゃねーか・・・・・」
んっ?????????・・・・・・・・・・・
・・・・あれっ、これどっかで見たことあるぞ・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!?
マックじゃん!!
そうか、こっちのマックでは塩やらコショーやらがこういう小さいのに入って
セルフでお好みで使えるように置いてあるんだった。
オレ:「お前これっガメてきたんか?」
コーヘイ:「人聞き悪い事言うなやー。ちょっと余分に取っちまっただけやわー。アホかあ」
オレ:「・・・・あー、そうなん・・・・って,そのパンに付けてるケチャップはマックにはないだろっ!!」
コーヘイ:「ハングリージャックス!!」
(オーストラリアのもう一つのファーストフード)
ヤツは得意げに答え、そのバックから更に小さなマヨネーズを取り出した。
オレ:「・・・・・・・・・・・」
そのバックの右のポッケがパンパンなのはナゼですか?・・・。
”さしすせそ”は、もう入手済みなんですね!?
「兄さんこんなんバックパッカーなら常識やでえ。いかに金を浮かせるかがBPの醍醐味みたいな
もんやん?!別に元々タダのモンなんだから・・・・せやろ?
全くまだまだビギナーBPさんはこれだから困るんだよ・・・・・・・」とコーヘイ。
「2週間先に旅してるだけじゃねーか!!・・・・・でも、そうかな・・・・うーん・・・・そうだなっ」
即決だった・・・・
次の町アデレードでオレのバッグのポケットもパンパンになった。
ツアー2日目は朝から山の中の絶景ポイントにたくさん降り立ったけど異常な霧で何にも見えなかった。
パンフでは絶景の写真でもオレ達が目にするのは、ただただ真っ白だった。
仕方がないのでオレは景色でなく参加してる他のメンバーの観察に入ることにした。
アジア人はオレら2人だけで後は地元オージーのおねえちゃんやオランダ人やイギリス人みんな比較的若く愛嬌がよかった。
その中でこの若いオージーの女の子にオレらは興味をそそられた。
この子はまだ十代後半から20代前半位のコで耳や鼻だけじゃなく、額や舌にもピアスを開けていた。
なんか喋った後に必ず”mate!!(マイッと発音する)”と付けた。
やたら陽気なコで
”オーストラリア楽しい?、マイッ?”
”何にも見えないね、マイッ?”
とか言いながら俺らに話しかけてきた。
俺らはマイマイねえちゃんと名付けた。
俺らがおもしろがってマイマイと真似すると気分を良くしたのか
”マイッ、マイッ、マイッ、マイッ、マイッ!!”と叫んでくるくる踊り出した。
・・・・かわいそうに・・・・・・・・まだ若いのに・・・・。
っていうか君見てるだけで今日、もうアリっ!!
昼食は山小屋でバーベキューだった。
一人A$5ドルとのことだったけど、ここでもオレらは朝作ったおにぎりで過ごした。今考えればとてもお得な金額で肉が食べれたんだけど、この時は2人とも絶対的な貧乏の道を
必要以上に意識してた気がする。(まだ先は長かったしね・・・・)
オレら2人以外は小屋の中で食事の準備を待っていた。
俺らは外で寂しく固く冷たくなったおにぎりを頬張った。
窓から中を覗くと皆楽しそうに喋りながら出てきた大きな肉を喰らっていた。
マイマイねえちゃんがこっちに気付きとなりの友達の女のコに何か囁く。
マイマイねえちゃん:「ちょっとー見てみーマイッ。あのジャパニーズ達。」
友達:「なんでヤツら外で米なんか食べてんの?そんな好きなのかなあ米っ?」
イエっ。そのジューシーでスーパービックな
オージービーフのが食べたいです!!
マイマイ:「違うよマイッ。あの目え見てみなマイッ!!あの物欲しげな目。・・・きっとあれはさー・・・」
友達:「うん。あの目、あのキッタないヒゲみたら分かるね。・・・・・そうだよ、きっとあれはさー・・・・・」
2人:「ただ貧乏なだけだよ・・・・」
バレバレだった・・・・
哀れに思ったのかツアーのガイドが「お茶ならタダだよ」と俺らに声を掛けた。
2人でダッシュで中に駆け込んだ・・・・
貧乏な2人のヒゲは同情を引いてパンやケーキを貰うのも忘れなかった。
目だけで相手を殺してた。
ブルーリボン賞モノだった。
2人で俳優になろうと誓った(ウソつけっ)
帰り際マイマイねえちゃんに”Are you Japanese,mate?”と聞かれた。
オレとコーヘイ:「YES!!」
納得いってないようだった・・・・
お前らやっぱ、もう日本帰ってくんな!!
その晩の11時30頃ワゴンはアデレードに到着した。
ガイドやマイマイねえちゃん他のメンバー達とはここで別れた。
オレとコーヘイはこの先も一緒に旅をするかどうかの話は何もしてなかったけどかなり遅かったのでBPを探すのに少し苦労してなんとか確保すると同じ所で深い眠りについた。